雑誌広告の罠

「5万円」被害金額である。東京での学生生活にも慣れ、当時自分はサークルの飲み会とパチンコ店を行き来するような毎日を送っていた。

実家からの仕送りもあったしバイトもしていたが、これでは懐が寂しくなるのが至極当然であった。いつものパチスロ雑誌を読んでいると、広告ページにいつも載っているとあるサラ金業者が目に留まった。

「○ールド」魔が差したとでも言うべきか、気が付くと携帯に電話番号を打ち込む自分がいた。「10万円借りたいんですが。」この新宿の業者は私に年齢や身分等を一通り聞くとただ一言言い放った。「ご融資はできません。」耳を疑った。再度聞き返したが、答えは当然「NO」であった。

予想していなかった事態に動揺しつつ電話を切る。何が起こったのか理解できないまま数分たじろいでいた。すると鳴り響く着信音。「さきほどお電話いただきましたワ○ルドの田中です。」ああ、田中さんね。先刻はどうも。

「当社ではご融資できませんが・・・特別に・・・他社をご紹介いたします。会社には内緒で・・・」いい人だ!完全に騙されている。いい人のはずがない。しかし世間知らずの自分は簡単に罠にはまるのだった。

紹介されたのは高田馬場の学生ローン。田中が言うにはこうだ。「車を買う頭金として借りること」「紹介の件は伏せること」「5万円の紹介料を田中の口座へ振り込むこと」「つまり10万必要ならば15万以上借りる必要がある」教えられた店舗に赴き、言われた通り手続きをする。

結果、ものの30分で20万円を借りる。そして田中への振り込み。5万円。はじめてのおつかいにも似た爽快感で満ちていた。田中さんありがとう。この平和ボケした自分を殴りたい自分が今ここにいる。

このプロセスがおかしいことに気付くのは、返済が滞って苦悩する頃になってだった。そもそも新宿ワー○ドは最初から融資するつもりなど無かったのではないか。紹介とは言うものの、件の店舗内において紹介された感は全く感じなかった。

紹介など存在しないのではないのか。個人的にではなく、組織ぐるみの紹介屋稼業なのではないか。いずれにせよ、紹介屋=詐欺にまんまと引っかかったわけである。

騙し取られたのは5万円だが、さらにサラ金への20万円の債務が付きまとうこととなった。

雑誌広告ほど信用できないものはない。